売上創出のためのB2B PPC戦略
寄稿者
SaaS Hackers
B2B PPCは、コンバージョン率の低さやデータ不足、そして予算の大半を投じるべきキーワードの見極めが難しいことから、多くの企業にとって成果を出しにくい施策です。あまりにも多くのB2B PPCエージェンシーやマーケターが、マーケティングの最終目標である売上に結びつけることなく、コンバージョンだけに注力しています。この記事では、B2B PPCキャンペーンを売上創出重視へ切り替えるための実践的な方法をご紹介します。
売上重視のPPC戦略とは?
レベニューマーケティングは、リードジェネレーションやデマンドジェネレーションと重なる部分の多い流行語です。どのリードが実際に商談となり、最終的に有料顧客になるかに焦点を当てるマーケティング戦略を指します。
結局のところ、売上創出こそがマーケティングの目的そのものです。ブランド構築からテレアポまで、あらゆる活動は最終的に事業成長と売上創出につながっています。
「レベニューマーケティング」の利点は、つまり売上に焦点を当てることで、営業からのフィードバックループを構築し、マーケティング施策を改善できる点にあります。CRMのデータやアトリビューションレポートを活用すれば、売上創出に実績のある領域へマーケティング活動と予算を再配分できます。
売上重視のB2B PPCキャンペーンを運用する
Google Adsの収益の大半はB2C企業によるものです。多くは利益率が低く、オンライン上の消費者の即時需要を取り込むためにPPCへ数百万を投じる大手EC企業です。そのため、Googleの広告プラットフォームは当初このB2Cの利用者向けに設計されており、B2B企業にとっては運用が難しくなっています。
B2B企業がPPCで苦戦しがちなのは、B2Cと比べて「コンバージョンするユーザー」の数が非常に少なく、キャンペーンの最適化が難しいためです。
データ不足
B2B PPCの担当者が直面する大きな課題の一つが、キャンペーンの最適化に使えるコンバージョンデータの不足です。このデータ不足により、コンバージョンだけでなく、売上につながるコンバージョンに向けてアルゴリズムを学習させることが難しくなります。
B2CやECのキャンペーンと異なり、B2B企業の多くはフォーム送信などのサイト上のコンバージョンに金額的な価値を設定していません。ECサイトでは販売額を直接紐づけられるため、自動入札戦略の学習ははるかに容易です。一方、B2Bではフォーム送信が1件ごとに同じ扱いとなり、片方は全く合わない見込み客、もう片方は非常に相性の良い見込み客であっても区別されないため、B2B PPCの成果は予測しづらくなります。
Googleの自動入札戦略
一般に、Google Adsの自動入札戦略の利用が推奨されます。手動では再現が難しく手間もかかる技術的な最適化を行えるためです。たとえば自動入札戦略は、地域や時間帯ごとの広告パフォーマンスやその他のオークション価格に基づいて入札額を調整します。
自動入札が推奨されることから、メインの入札戦略として「コンバージョン数の最大化」を使うのも一般的です。この場合、特定のキーワード、地域、時間帯の入札が、コンバージョンを最大化するように調整されます。
B2B PPCではこれにいくつか問題があり、その多くは前述のとおり、B2Cと比べてB2B企業が利用できるコンバージョンデータが少ないことに起因します。B2CのPPCキャンペーンは1日に数千件のコンバージョンを獲得できますが、B2Bキャンペーンでは1日に1件、場合によっては0件ということもあります。データが少ないとアルゴリズムの学習が難しく、わずか1、2件のコンバージョンに基づいて最適化が偏る可能性があるため、自動化された戦略は短期的には効果を発揮しにくくなります。
ヒント:コンバージョンデータが不足している場合の対処法の一つは、まずクリック数の最大化から始め、その後コンバージョン数の最大化に切り替えることです。こうすることで、Googleにこの情報に基づく最適化を任せる前に、より多くのコンバージョンを獲得できます。
コンバージョンの先を目指す
B2B企業におけるコンバージョンは、通常、SaaSツールへの登録でも営業への問い合わせでも、Webサイトのフォーム送信を指します。一般的に、B2BサイトでGoogle Adsに計測・最適化対象として設定されるのは、このコンバージョンアクションです。これがレイヤー1のコンバージョン最適化で、自動入札を最適化する最も基本的な形です。

多くの企業、特にテクノロジー企業にとっての問題は、コンバージョンがあっても、それが自社やプロダクトに合う見込み客であるとは限らないことです。要因は様々ですが、Google Adsの入札戦略はコンバージョンの質や、そのコンバージョンが事業の売上につながる可能性に基づいては最適化しないという課題があります。
マイクロコンバージョンとスマートゴールでGoogleを学習させる
コンバージョン数が足りないという問題を回避する方法の一つは、マイクロコンバージョンのデータを分析に取り入れることです。マイクロコンバージョンとは、たとえばWebサイトの閲覧ページ数、特定のページの閲覧、あるいはサイトへの滞在時間の長さなどが挙げられます。
こうした先行指標は、実際にコンバージョンとして計測しなくても、疑似的なコンバージョンとしてアルゴリズムの学習に使えます。マイクロコンバージョンに任意の金額的価値を設定することで、マクロコンバージョンを待たずにアルゴリズムを学習させることができます。これがレイヤー2のコンバージョン最適化です。

この最適化手法は、クリックをスコアリングし、実際にフォームへ入力しなくてもエンゲージメントの高いユーザーに向けてアルゴリズムを最適化させる方法と捉えられます。
リードの質と売上に向けた最適化
コンバージョン最適化のこの初期段階は有用ですが、質が高く売上につながりやすいリードに向けてキャンペーンを最適化する問題は解決しません。それにはGoogle AdsとCRMを連携させる必要があります。
コンバージョンをCRMと連携させることは、フォームが入力されたかどうかだけでなく、CRM上のコンバージョンデータに基づいてGoogleのアルゴリズムを学習させるために不可欠です。これがレイヤー3のコンバージョン最適化です。ファーストパーティデータを用いて、売上創出とリードの質に基づき入札を最適化する最も効率的な方法です。

レイヤー1またはレイヤー2のコンバージョンデータに頼る問題は、質や売上の可能性がほとんどわからないことです。通常、サイト上の主要なCTAや、マイクロコンバージョンを達成したかどうかという「はい・いいえ」の二択にとどまります。
HubSpotなどのCRMとGoogle Adsとの連携が改善されたことで、自社のCRM内のデータに基づくレイヤー3の最適化でGoogleのアルゴリズムを学習させられるようになりました。
その一例が、リードが商談(Opportunity)になった時点のイベントをHubSpotで作成することです。これをGoogleに送り返してこのアクションに価値を設定すると、そのリードが価値の高い良質なリードだったことがアルゴリズムに伝わり、このデータに基づいて入札プロセスが最適化されます。
この追加データによって質に関する情報が得られ、ひいては売上創出の可能性に焦点を当てられます。
Salesforce:オフラインコンバージョンのインポート
商談や受注をSalesforceで管理している場合は、受注した案件をGoogle Adsにインポートし、GCLIDを同期できます。GCLID(Google Click ID)により、クリックとSalesforce上の商談が紐づけられ、ループが完結して受注案件に向けた最適化が可能になります。
HubSpot:ライフサイクルイベントの変更を同期する
HubSpotなら、Google Analyticsからコンバージョン目標を同期するのと同じように、イベントをGoogle Adsへ同期できる、よりスマートな連携が使えます。詳細についてはHubSpotの参考記事が役立ちます。これにより、コンタクトがMQL、商談、顧客になった時点でGoogle Adsへ同期できます。これはGoogle Ads上でコンバージョンとして扱われ、入札戦略がそれに応じて最適化されるため、最適化のレイヤーがもう一つ加わります。
手動によるPPCアトリビューション分析
売上重視のB2B PPC戦略を構築するもう一つの方法は、過去にトラッキングやアトリビューションを設定してPPCキャンペーンを運用した実績があることが前提となります。コンバージョンだけでなく、実際に何が売上を生んでいるのかを、このデータを分析して確認する必要があるためです。
受注案件のレビュー
リード品質が高く、売上につながっているキャンペーンを評価する手動の方法のひとつに、Salesforce や HubSpot での受注(Closed Won)案件を確認する方法があります。これが少しでも役に立つには、リードの流入元を追跡するためのアトリビューションとレポーティングがある程度設定されている必要があります。まだ設定していない場合は、今後のPPCキャンペーンに着手する前に、まずそこを優先してください。
ここで重要になるのが、コンバージョンのその先を見ることです。多くのPPCエージェンシーや社内のマーケティングチームは、リードやMQLの獲得までしか見ていません。そこが営業への引き渡しポイントだと考えているためです。
正直に言うと、このPPCのアプローチは、何よりもマーケティングに対する意識の転換です。売上を生み出したいという意志を持ち、責任範囲がマーケティング適格リードの獲得にとどまらないことを受け入れるということです。
売上につながるキーワードトリガーを確認する
この分析の目的は、受注に至ったキーワードの傾向を見つけることです。あるテーマから別のテーマへと傾向が移っていくこともよくあります。また、その傾向は多くの場合、自社のプロダクトのポジショニングや強みとも結びつきます。
例えば、あるテックプロダクトに10の機能があり、その10個すべてについて広告を配信していても、受注できるのはそのうち2つに関するものだけだとします。そうなると、市場での自社の立ち位置や改善すべき点が見えてきます。さらにPPCキャンペーンにとっては、短期的な成長のためにどこへ予算を投下すべきかが見えてきます。
これは、他の領域からはリードが一切得られないという意味ではありません。むしろそのデータをプロダクト改善に活かすことで、いずれ他の広告グループからも受注できるようになります。
失注理由を記録する
これは主にプロセスの問題で、営業チームが担うべきことです。マーケティングチームがいわゆるファネル下部で起きていることに基づいてキャンペーンを最適化できるよう、しっかりしたフィードバックの仕組みを持つことが非常に重要です。
例えば、広告経由のリードが営業ファネルの最後まで進んだものの、適合性ではなくプロダクトの機能が理由で失注した場合、マーケティングのアプローチは変えるべきではありません。失注した案件はすべて今後避けるべきだ、という一律の経験則を持つと、貴重な情報や売上の可能性を逃すことになります。
リード選定基準を厳格にする
フィードバックの範囲を絞る方法のひとつは、マーケティング適格リード(MQL)の定義を非常に厳密に合意しておくことです。こうすれば、最初からフィードバックが組み込まれます。特に新しい施策や戦略を試すときや、新しいセグメントを開拓するときには、何らかのフィードバックループは引き続き必要です。それでも、選定基準を厳密に定義しておけば、MQLとSQLなどの違いを全員が理解しているため、その都度の議論は少なくて済みます。
PPCにおける売上とコンバージョンの「質」に注目する
この戦略の要点は、業務上の関係とデータの両面で、営業との緊密なフィードバックループをつくることにほかなりません。
マーケターは、自分でコントロールできると考えている範囲だけに目を向けがちです。その結果、コンバージョンやリードの記録に頼りすぎ、リードの質や営業からのフィードバックへの注目が足りなくなります。
主なステップは上で述べましたが、コンバージョンだけでなく売上創出に重点を置いたB2BのPPC戦略を実行するために必要なことを、以下に短いステップの一覧としてまとめました。
- 正しいアトリビューションを実装する:CRMとGoogle Adsを連携する
- マイクロコンバージョンを設定し、金額的な価値を割り当てる
- 受注案件と失注案件からフィードバックを得る
- フィードバックに基づいてキーワードのターゲティングを調整する
結局のところ、最も売上につながるキーワードに向けてマーケティングを行い、それらのキーワードに対する入札が自動で最適化されるようにすることに行き着きます。
B2B SaaS企業で、プロダクトが急速に進化している場合や、新しいプロダクトカテゴリーを定義・開拓している場合は、このプロセスは市場調査として不可欠です。また、リード創出やデマンドジェネレーションを担う以上、最高の投資対効果、つまり広告費用対効果(ROAS)を確保することも必要です。
この記事がお役に立てば幸いです。ご質問や、実際の設定方法について詳しく知りたい場合は、お気軽にお問い合わせください。
寄稿者
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