ブランドキーワードの横取りとは?
リスティング広告のアカウントで高いROASが報告されている場合、まず確認すべきは、その数字のうちブランドキャンペーンがどれだけを占めているかです。チャネルのアトリビューションを見直すOpsリードや運用型広告の担当者は、ブランドキャンペーンが、本来であればオーガニック検索で発生していたはずのコンバージョンまで自らの成果としている実態に気づくことがよくあります。その結果、アカウントが実際以上に効率よく見えてしまいます。競合によるものと自社内での数値の水増しという、2種類のブランドキーワードハイジャックを理解することが、真の獲得成果とオーガニック需要の付け替えを切り分ける第一歩です。
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ブランドキーワードハイジャックとは、リスティング広告が自社のブランド検索語句を対象にしている状態、または競合が同じ語句に入札して、そのブランドに向かうはずのトラフィックを横取りする状態を指します。自社のブランド名に入札すると、そのユーザーの大半はオーガニック検索でもサイトにたどり着いていたはずなのに、クリックやコンバージョンが有料広告の成果として計上されます。その結果、当該キャンペーンの報告上のROAS(広告費用対効果)が人為的に押し上げられます。
この用語は、リスティング広告の議論で頻繁に混同される2つの異なる問題を含んでいます。1つは競合によるもので、競合他社があなたのブランド名に対して広告を出すケースです。もう1つは社内の問題で、すでに自社が獲得している需要を、自社のキャンペーンが自らの成果として計上してしまうケースです。どちらも成果データを歪めますが、対処法はまったく異なります。
ブランドキーワードハイジャックとは?
ブランドキーワードハイジャックとは、ブランド名での検索に対して有料検索広告が表示され、本来なら別の場所へ向かったはずのクリックを横取りするあらゆる状況を指します。仕組みはどちらのケースでも同じです。広告がオーガニックの検索結果の上または横に表示され、検索対象を正確に把握していたユーザーのクリックを奪います。
競合があなたのブランド名に入札する場合
こちらはより直感的に理解しやすいケースです。競合が御社の社名に反応する広告を購入し、検索中の見込み顧客を捉えて自社製品へ誘導しようとします。SaaSでは、カテゴリ内の比較が頻繁に行われ、乗り換えコストも低いため、タイミングのよい広告が実際に意思決定を変えてしまうことがあり、この手法はよく見られます。
自社のブランド名に入札する場合
こちらは多くのPPC監査が見逃すケースで、ROASの水増しに直接結びついています。企業が自社のブランド語句を対象にリスティング広告を運用すると、もともとサイトを訪れるつもりでブランド名を入力した人のクリックを広告が獲得します。こうしたユーザーが他のサイトへ流れる恐れはありませんでした。有料キャンペーンは、無料でコンバージョンに至るはずだったオーガニックの検索結果とユーザーの間に割り込んでいるだけです。
ブランド入札はどのようにROASを水増しするのか?
水増しが起こるのは、アトリビューションシステムが、需要を生み出したチャネルか単に横取りしただけのチャネルかを問わず、最後にクリックに関与したチャネルに成果を帰属させるためです。自社名へのクリック単価は低く、コンバージョン率は高いため、ブランドキャンペーンはほぼ例外なく非常に高いROASを示します。しかし、そのどちらの事実も、その広告費が有益な働きをしていることを意味しません。
簡単な例で考えてみましょう。あるSaaS企業のブランド名は月間5,000回検索されています。従来はオーガニックの検索結果がその大半を獲得し、メディア費用ゼロで一部をトライアル登録につなげていました。そこで同社が小規模なブランドキャンペーンを開始し、自社のオーガニック結果より上位に広告を表示させます。すると、同じ検索ユーザーの大半を広告が獲得し、アトリビューションモデルは、その結果生じた登録をキャンペーンの成果として計上します。
このキャンペーンの報告上のROASは、アカウント内で最も高くなることも多く、非常に優れて見えます。すでにブランドを検索していたユーザーを獲得する「コスト」は、そのユーザーに帰属する売上と比べればごくわずかだからです。この数字が隠しているのは、その売上のほとんどが増分ではないという点です。広告の1つ下に表示されているオーガニックの検索結果から、登録は同じように発生していたはずです。このキャンペーンは新たな需要を生み出したのではなく、既存の需要を有料広告の成果として名前を付け替えたにすぎません。
だからこそ、ブランドキャンペーンを非ブランドやプロスペクティングのキャンペーンと一緒にして、1つの統合ROASとして扱ってはいけません。そうすると、アカウント内の「効率の良さ」の大半が、新たな成果を何も生んでいないチャネルから来ているという事実が隠れてしまいます。
ブランドキャンペーンのROAS水増しはどう見抜くか?
水増しを見抜くには、広告が配信されていたかどうかにかかわらず存在していた需要から、ブランドキャンペーンの真の増分効果を切り分ける必要があります。いくつかの方法を組み合わせて使うと、信頼できる全体像が得られます。
- 有料のブランドクリックとオーガニックのブランドクリックを、時系列で比較します。Google Adsのブランドキャンペーンのデータを、Search Consoleまたはオーガニックのブランド検索ボリュームと突き合わせます。有料のブランドクリックが増える一方で、オーガニックのブランドクリックが同程度減っている場合、有料キャンペーンは純増のトラフィックを生んでいるのではなく、オーガニックを侵食している可能性が高いです。
- ブランド除外テストを実施します。一定期間(通常は2〜4週間)ブランドキャンペーンを停止し、オーガニックのコンバージョンだけでなく、総コンバージョンの変化を測定します。総コンバージョンがほとんど変わらなければ、有料のブランド広告費は大部分が不要だったことになります。
- インクリメンタリティテストを活用します。ジオベースのホールドアウトテストやコンバージョンリフト調査とも呼ばれるこの手法は、比較可能な市場やユーザーグループを、テスト群(ブランド広告を配信)と対照群(ブランド広告を停止)に分け、両者のコンバージョン数の実際の差を測定します。これは、どのみちコンバージョンしていた需要とは切り離して、ブランドキャンペーンがもたらす本当のリフトを把握するための業界標準の方法です。
- オークション分析で競合の存在を確認します。オークション分析で自社のブランド語句に競合が表示されていなければ、守るべき侵入がないため、防衛的な入札の根拠は大きく弱まります。
リスティング広告の成果を評価するマーケティングチームは、ROASの数字が高ければキャンペーンが機能している証拠だと考えがちです。その結論を出す前にブランドと非ブランドを切り分けることは、報告された数字が本当の成長を反映しているのか、それともオーガニック需要の付け替えにすぎないのかを見極める最も手早い方法の1つです。Seedlingが、見出しとなる指標を信頼する前にチームに実施するよう勧めているのも、まさにこの種の確認です。
競合に自社ブランド名で入札されている場合はどうすればよいか?
オークション分析で、自社のブランド検索に競合が継続的に表示されていることがわかった場合、対応は前述の社内のROAS問題とは異なります。この場合は、対処すべき本物の外部からの脅威があるためです。
- ブランド語句でのインプレッションシェア損失をモニタリングします。「ランク損失によるインプレッションシェア」の上昇や、ブランド検索でのオークション分析に見慣れない広告主が現れることは、競合によるハイジャックを示す最も明確なサインです。
- 広告プラットフォームに商標に関する申し立てを行います。Google Adsには正式な商標ポリシーがあり、ブランドの所有者は、登録商標を競合が広告文に直接使用することを制限できます。ただし、プラットフォームは通常、その語句への入札自体は引き続き認めています。
- データで正当化できる場合にのみ、防衛的に入札します。競合の有無にかかわらず、すべてのブランド語句に一律で防衛的な入札を行うと、先に述べた自社内での水増しという問題を再び招きます。防衛的な入札は、競合の侵入が確認され、それによって有望なクリックを実際に失っている語句に限定してください。
- 継続的なアラートを設定します。競合がキャンペーンを開始すると、オークション分析の状況は急速に変わることがあります。そのため、広告費が相応にかかっているアカウントでは、定期的な手動チェックだけでは十分ではありません。
予算判断や取締役会への報告で重要になる理由
水増しされたブランドのROASは、キャンペーンの1項目にとどまらない影響を及ぼします。ブランドキャンペーンが、アカウント内の他のどのチャネルよりも数倍高いROASを報告すると、予算配分は新たな売上を生んでいないチャネルに偏ります。その代償を直接負うのは、実際に売上を生んでいる非ブランドやプロスペクティングキャンペーンです。
この歪みは、レポートの段階でさらに大きくなります。マーケティング責任者やCFOに提示される統合ROASは、ブランドキャンペーンが平均値を押し上げているからこそ健全に見えます。ブランド広告費を除き、非ブランドのROASだけを単独で測定すると、状況はかなり厳しく見えることが多く、その数字こそが新規顧客獲得の実際の成果を反映しています。
解決策は見せかけではなく構造的なものです。ブランドと非ブランドのROASを別々の2行で報告し、統合しないこと。そして、ブランドキャンペーンの報告値は、インクリメンタリティ調査や除外テストで検証するまでは確定した事実ではなく、あくまで仮説として扱うことです。この切り分けを標準的な運用にしたチームは、需要の獲得と需要の創出を取り違えることがなくなります。この区別こそが、リスティング広告の予算が事業を実際に成長させているかどうかを左右します。
出典
- オークション分析レポート、Google Ads ヘルプ
- コンバージョンリフト調査について、Google Ads ヘルプ
- 商標ポリシー、Google Ads ポリシーヘルプ